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地域の魅力あふれる商品とサービスを全国に

毎日新聞社の「MOTTAINAIキャンペーン」に賛同する信用組合の中央金融機関、全国信用協同組合連合会(全信組連)は、2021年10月から独自に運営する新たなクラウドファンディング「MOTTAINAIみらい(https://camp-fire.jp/curations/mottainaimirai)をスタートさせました。
購入型では全国トップの㈱CAMPFIREのサイト上で展開するもので、信用組合の情報網を生かし、地域に埋もれた魅力あふれる良い商品やサービスを全国に紹介していく予定です。
内藤純一理事長にサイトの狙いや新型コロナへの金融機関としての対応策などを聞きました。(七井辰男)

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–初めに「MOTTAINAIみらい」というネーミングに込めた思いをお聞かせください。
◆前身の「MOTTAINAIもっと」で、2020年5月からコロナ禍の事業者を支援する信用組合の「新型コロナ対応事業者応援プロジェクト」を実施してきました。今回、名称を変えることでコロナにまず打ち勝って、乗り切っていくんだという思いを込めました。さらに、大都市の消費者にあまり知られていない加工食品とか商品、サービスをサイトに載せて知名度を上げ、地域経済を活性化させる、それがひいては信用組合の業績にもつながるという、未来志向を前面に出していきたいと考えています。

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全国信用協同組合連合会 内藤純一理事長

–この新たな取り組みを全国145の信用組合にどのように働きかけ、どう展開されていくのでしょうか。
◆「応援プロジェクト」では、本来は事業者さんが負担すべき手数料を全信組連が全額負担し、集まったお金は事業者に全額還元してきましたが、信用組合との会合の場でもサポートしていくことを再度、伝えました。2020年の動きを見ると、事業者さんと協力して綿密に取り組んでいる信用組合は達成率がかなり高い。事業者との仲立ち機能が強いと、画像や文章の作り込み方も印象深く、パンチのある情報提供になりますが、弱いと達成率も低くなるという因果関係が見えてきた。業績が上がっている流れを生かし、今回の「MOTTAINAIみらい」でさらに弾みをつけたいと思っています。

–コロナ禍対策として全信組連が取り組まれている施策をお聞かせください。
◆2020年の3月に信用組合の業界団体である一般社団法人全国信用組合中央協会と全信組連が合同で、コロナ対策の危機対応本部を立ち上げ、信用組合やその取引先への影響等について情報収集し、対応策を検討・実施するとともに、関係当局にも意見具申等を行ってきました。2020年3月に、日本政策金融公庫による実質無利子無担保融資(以下、ゼロゼロ融資)が開始されましたが、中小企業から申請が殺到して手続きに時間がかかり過ぎたため、政・官に対応をお願いしたところ、補正予算が組まれ、2020年の5月から民間金融機関を通じたゼロゼロ融資がスタートしました。このインパクトは非常に大きく、現在にいたるまでの資金繰り問題の峠は越えたと思っています。

–事業者向けの民間融資が景気悪化に一定の歯止めをかけた訳ですね。
◆各関係当局にご説明するときに申し上げたのは、民間金融機関は日々、おつきあいしてる中小企業のことを一番わかっているので、民間金融をうまく利用する方法を考えていただきたいということでした。それで実現したゼロゼロ融資を受けた信用組合の取引先は9万3千件にのぼります。もし、これがなければ倒産が激増していたはずでしたが、むしろ倒産は2021年にかけて減少しているんです。緊急融資は民間が約36兆円、政府系が約20兆円、合わせて56兆円の資金が出た。それに持続化給付金、雇用調整助成金などの補助金的なものが約10兆円。これで1年半は乗り切った。今後は次の局面へと移ります。

–そうした努力を継続された中で、全信組連さんの2020年度決算は当期純利益が41億円、自己資本比率も16.5%と金融機関としては比較的高水準となっています。
◆信用組合業界も全体としては、底打ち感が出て、よくなってきています。全信組連の決算では2021年3月期で総資産が11兆円以上あります。リテールの貸し出しはほとんどやってないので3兆3千億円の有価証券を運用するのが主力です。その運用で200億円を超える資金利益が3年続いています。2016年ごろまでは国債や財投債、地方債などを中心に運用してきたのですが、この年の1月に日銀がマイナス金利を導入したため、国債などでは収益を取りにくくなってきた。そこでリスク分析をしたうえで相対的に安全性の高いエクィティや不動産投資信託なども入れてポートフォリオを組み替えた。数年前までは苦しい時期もありましたが、なんとかうまくいくようになりました。

–理事長は講演などで「貸し出す金融」と同時に「育てる金融」が大切だと言われています。その真意は。
◆全信組連は信用組合の中央銀行という役割を務めているのですが、信用組合の向こう側には、300万社を超える中小企業あるいは零細企業、小規模事業者の方々がおられるわけです。しかし、地域経済はコロナで痛んでる面もあるし、それ以前のリーマンショック、あるいはデフレ経済の中で痛み続けている。グローバル化で、企業城下町がどんどん海外に行って、さびれてしまったところも随所にある。コロナが片付いても、その問題は底流としてあるわけです。
しかし、信用組合は、別の地域に移るわけにはいかない。地域にまさに密着している金融機関なんです。だからその地域が、繁栄しない限りは、信用組合の繁栄もない。運命共同体であることを宿命づけられている。事業者を発掘して、起業創業とか事業承継、事業転換とかの資金支援やコンサルティングができないか。まさに「育てる金融」の観点から全信組連の手作りで「中小事業者等支援ファンド向け資金供給制度」を設けファンドに資金供給する仕組みを作りました。

–うまくいっている事例は。
◆今のところ全国で8ファンドが設立され、規模は総額26億円です。実施している65案件の中には、再生可能エネルギーの小水力発電とかバイオマス発電とかもあります。小水力発電は、秋田県信用組合が支援している、ため池や田んぼから流れる水の位置エネルギーを利用して電力を起こす計画です。まだ完全黒字になるほどではないですが、順調に進んでいます。また、飛驒信用組合は、飛騨高山の駐車場を利用して小規模な、飲食の事業者の方々を集めた屋台村を作った。店主の負担をできるだけ小さくするためです。

–最後に「MOTTAINAIみらい」の活用を検討している事業者や信用組合にメッセージを。
◆事業者と信用組合には、知恵を絞っていただき、そのサイトに入って商品をご覧になる支援者の皆さん方に魅力あるプレゼンテーションができるよう、是非、思う存分の工夫を凝らしていただきたい。我々も大都市の消費者の皆さんや多くの消費者の方々に、地域に埋もれた魅力あふれる良い商品やサービスを紹介していきますし、オンラインを通じてサポートしていきますので、このサイトにぜひ注目していただきたいと思います。

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●ないとう・じゅんいち 1951年兵庫県生まれ。75年東京大学経済学部卒、同年大蔵省(現財務省)入省。銀行局銀行課長、東海財務局長、証券取引等監視委員会事務局長、金融庁総務企画局長などを歴任。2011年全国信用協同組合連合会理事長に就任。19年より一般社団法人全国信用組合中央協会理事長を兼務。

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