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書評「ブラジルの社会思想〜 人間性と共生の知を求めて〜」

軍政から民政への移管、ハイパーインフレや通貨危機など、激動と困難の時代を生きぬき、脈々とつむがれてきたブラジル社会思想のエッセンスを集成した一冊。
アマゾンの熱帯雨林の保護活動で知られ、毎日新聞社の招きで2015年に来日したマリナ・シルバ現環境・気候変動大臣についても、同じゴム採取人出身の環境保護活動家で、師と仰ぐシコ・メンデス(1988年暗殺)と一緒にひとつの章で取り上げている。
シコ・メンデスらは大規模開発や森林伐採に対する抵抗運動に環境保護という思想を取り入れる。アマゾンの生態系の保護は、長年相互の利益をめぐって対立関係にあった先住民とも共通の目的意識として共有される役割を果たし、やがてそれは自然にも人に対しても搾取のない社会の実現を求める社会環境保護主義として結実する。
持続性を中心に置いた政策転換を環境問題だけでなく、社会・経済・人権においてより広く社会正義を実現する考えは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に先立つものであり、抵抗運動と交流を重ねる中で形成されてきた思想といえるだろう。
他にも文豪マシャード・ジ・アシスからルーラ現大統領まで、ブラジルの社会的現実に対応して独自の思想を生み出してきた思想家・表現者たちを取り上げ、その生涯と仕事を解説している。対立と分断の危機にさらされた社会に、南の世界が示す対話と共生のためのヒントが詰め込まれている。「社会思想」という書名から「難しそう」と思いそうだが、各人の生い立ちや交友などからいかに思想が醸成されてきたかが理解でき、読みやすい内容となっている。
穏健左派で現実路線を追い求めながら、ブラジルの変革を主導した元大統領、カルドーゾ、「解放の神学」を推進し、軍政と対峙したレオナルド・ボフ、先住民のリーダーで、ロックバンドのスティングとともにアマゾンの熱帯雨林の保護を訴え、日本を含むワールドツアーに参加したラオニ・メトゥティレらも収録。
小池洋一、子安昭子、田村梨花共同編集。3630円(税込み)現代企画室発行。

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